遠征の目的
週末は福岡の方まで生徒をつれて遠征試合に出かけました。車の屋根にルーフキャリーをつけて荷物をその中に押し込み、車内も詰め詰めでした。今回の遠征の目的はもちろんゲーム内容も大切ですが、それよりも相手にとって都合のいい状態での試合をどう戦うか、十分に準備できない環境でいかに自分の準備を行うか、その方法を自分で工夫できるか、お邪魔させていただくということに対して礼を尽くすことができるか、ということを話しました。
出先ではコートに入るよりももっと以前から準備していかなければ力が発揮できないことが多いものです。イチロー選手は試合の4時間前からスタジアムに入って準備するそうです。今回それは出来ないにしろ、朝起きた時から、もしくはそのために早く起きるとかという意識が大切です。 白石豊先生の著書『勝利する心』にザリヤートカと呼ばれる朝の調整法が紹介されていました。 ザリヤートカ:散歩、ジョギング、ストレッチをしながらカラダを目覚めさせ、筋肉や神経の働きを活性化させるトレーニング 朝練というと「えっ?!」と拒否する人が多いですが、体と心を調整する体操、呼吸法を毎朝15分行うだけで見違えるように体が変化していくそうです。さっそく私も始めてみていますが、あまりにも自分の体の固さに驚かされ、これが柔らかくなるとと思うと少しワクワクしています。 帰りは一度頑張ってみようと大阪まで走りました。8時間ほどの長旅でしたがかなりのストレスでした。選抜やインターハイに出場することができれば、帰りもフェリーにしようと思います・・・。 |
部活ノート
7年前ほど前、部活でバドミントンノートを作るように、それを定期的に提出しなさい、ということを強制的にやったことがありました。しっかり書ける者や乱雑な者など様々でした。それを数年続けていくうちに見るに耐えなくなり、今度はプリントで形式を整えたものに記入するという方法で目標から課題、反省点などについて書いていくように変更しました。これも最初はいいのですがやはり書けない生徒が増えていきました。さらには落書きする者も出る始末。その後、ノートやプリントを出させるということは休止しました。
体育館の壁に掲示物を貼るスペースがあるのですが、そこに卓球のロンドン五輪メダリストの平野早矢香選手が高校生の時に書いていた部活ノートについての記事をさりげなく張っておきました。張り出してからもう半年以上経ちますが、先日、1年生の2人が「先生、部活ノートを1週間おきに見てもらってもいいですか?」と言ってきました。「いいよ」と返事すると、ほかに「毎日出してもいいですか?」という生徒もいたので「いいよ」と返事しました。 今まで提出は強制ではなかったにしろ、3年生の1人はノートを見てくださいと持ってきてはいました。しかし、今回は1年生ということで少し胸に熱いものが込み上げてきました。いつまで続くかわかりませんが全力でおつきあいしたいと思います。 |
ロンドンオリンピック男子シングルス
9月末の週末は日本体育協会のバドミントンコーチ義務研修会が行われました。今回はロンドンオリンピックの決勝からグループで課題を抽出し、練習方法をコートで実習してみるという課題でした。コートで実習するということなので技術面、体力面、戦術面での検討となるのですが、私自身は本当はメンタル面の課題抽出を行っていました。
研修では、男子シングルスにおけるショートサービスからのセンター位置でのハーフショットのやり取りからロビングを上げ、アタックしてからまたハーフのやり取りをする。逆にロビングを上げてアタックされたものをレシーブする、それを15本1ラリーとして25分行うというものでした。実際は時間の関係で10分程度でしたが、モデルになった学生さんにとってはかなり負荷の高いものであることがわかりました。もちろんトッププレーヤーをターゲットとしているのでそうなることはわかっていましたが。 さて、今回のロンドンオリンピック男子シングルスでは、リーチョンウェイとリンダンの対戦になりました。 1ゲーム目、試合が動いたのは、8−8の時のリーチョンウェイのクロスネットがネットインしたのがきっかけで、リンダンの感情がマイナス方向に動いたときでした。その差は最後まで詰まらずリーチョンウェイが勝ちきりました。 2ゲーム目、7−6(周辺)リーチョンウェイリードのところで、リンダンのプレーは柔らかくなってきてはいたのですが、クロスのドロップを大幅サイドアウト。しかし、ここでリーチョンウェイに油断の感情が動いたように思えました。8−8まで一気に追いついたリンダンの勢いが止まらず、リンダンの勝利。 ファイナルゲーム、ずっと僅差で試合が進みましたが、19−18リーチョンウェイリードのところで、リーチョンウェイに「勝ちたい」気持ちが出過ぎたのかバックラインのジャッジミスで失点。19−19になったところでリンダンのスマッシュアンドラッシュが炸裂。リーチョンウェイに後悔の念が残ったのかもしれません。リンダンの優勝が決まりました。 今回のシングルスでは、リンダンはマイナス感情に引きずられ、リーチョンウェイはプラス感情に引きずられているものと考えられます。 リンダンは出来て当たり前のプレーに関してはさほど反応せず、ネットインやジャッジミスなどの自分ではどうすることも出来ない出来事に敏感に反応します。 リーチョンウェイは、そういう不慮の出来事に対しては感情を表に出さず淡々とこなしていくのですが、「勝ちたい欲」に 感情を動かしてしまうことが今回のオリンピックという大舞台では起こってしまったのでしょう。 あくまでも私見ですが、そのように感じた試合でした。 |
どう生きるのか
学校の授業では英単語を覚える方法として「声に出して3回書いてみる」という方法をとっていますが、最終的には声を出さない、3回書けば休む(寝る)、など「とにかくこなせばいいんでしょ?」的な要領だけを考えた姿勢が多く見られるようになりました。悲しいことですが良い感情を交えて記憶することとはほど遠い行為となってしまっています。
スポーツにおいても、より効率のいい練習、すぐに勝てる戦略というような方法がもてはやされています。しかし、教えられたことで効率よく練習し、すぐに勝てたとしても感動は少なく本当に身に付くことは少ないのではないでしょうか。 お金持ちの家庭に生まれた人は経済的に何不自由なく生活することが出来ますが、やはり心の豊かさはいつまでも不十分だと言われています。目に見える物だけ、聞こえる物だけを信じる様子が多く見られ、自己中心的なフィルターを通して見たり聞いたりしていることに気づけない人も多いです。そういう私自身もまだまだ自己中心的なフィルターの存在に気づけないときが多いのですが。 つまり、人から教えられたものは身に付く土台が出来ていないと身に付かないということです。身に付く土台とは普段からの問題意識、あれこれと工夫して突破しようという試行錯誤の回数、上手く行っているかわからないけどとにかく続ける素直さ、その行為の中の違和感を感じる感性、でしょうか。上手くなりたいのなら「上手くなろうと思うこと」がまず大切なのです。故松下幸之助氏も似たようなことを仰ってます。 (故)鈴木俊隆老師は、肩の痛みを訴える人に対して、 「その肩の痛みは...........一生続く」 と諭し、 桜井章一氏は、 「不調こそ、我が実力」 と諭します。 人生は悩み、迷いの中を泳ぐようなものなのでしょう。「悩みなんかないのでは」と周りから言われることがあります。全くそんなことはなくちょっとしたことでもいろいろと気にかかります。ただ、悩んでいるようには見せかけないように装い、心を中心に持ってくることだけは意識しています。 さて、スポーツをする上で大切なことが「致知」10月号ミニバスケットボール指導者の土本さんの記事に載っていました。そこから少し引用します。 「私の考えるミニバスの目的は、ただ試合に勝つ、全国制覇を目指すといったことではありません。それはひとつの目標でしかないのです。目的は辛いことから逃げず、自ら掲げた目標に向かって最後まで諦めず、信念を貫き通す強さを身につけることです。」 全くその通りだと思います。勝ってもそれはすぐに過ぎ去るものであるし、それはその瞬間の勝利でしかありません。 「勝利」が勝って利を得るという意味ならばそれは半分しかあっておらず、勝って不幸になる人生もあります。しかし、過程を重視出来る人は不幸になりにくい心の強さ、運を身につけられると思います。 |