龍爪でグリップ?
試験前のため練習は少なめになってきています。今はアタックからドライブの練習をメインでやっています。しかし、ドライブも速くなってくるとなかなかシャトルをコントロールできないようで右に左に、上に下にシャトルが飛んでいます。最も大切なことはリズム感を失わないこと。足が止まるとコントロールすることが非常に難しくなります。シャトルに対して打たされるようになってしまい、打ち分けられる範囲が狭くなってしまうためです。
また、ラケットヘッドの準備がタイミングに合わせて出来ていることも大切です。ヘッドの準備が遅れるとシャトルをなでるようなインパクトになり、相手からさらに押し込まれかねません。面が返れば沈めることは出来るのですがそのためにはコンパクトなスイングは必須となります。 もう一つ。これは私だけの感覚なのかもしれませんが、グリップはややウエスタン気味に持ち、小指でラケットを支えながら、親指と人差し指を主に使いラケットを持ちます。そうすることによって肩の力が抜けるとともに、リストスタンドによってラケットヘッドが上がり、フォアとバックの持ち替えもスムーズにいくような気がします。 バックハンドではサムアップしますが、親指はどちらかというとラケットを支えるような働きで、人差し指と中指で面を返すようにします。親指をラケットのグリップの平らな部分に押し付けるようにプッシュしていくときもありますが、この場合はグリップの斜めから横の部分に親指をつけています。親指がその位置ではラケットが外れるのではないか?と思われますが、人差し指と中指でラケットを運ぶことが出来れば手から外れることはあまりありません。 この手の使い方は、実は古武術の甲野善紀氏が出演されたNHKの「爆問学問」で紹介されていた「龍爪」と言われる手の形に似ています。古武術での使い方とは違うかもしれませんが、通じるものがあるのではないかと思っています。 |
ペルソナとシャドー
週末に近畿大会が福知山で行われました。4人のシングルスと4組のダブルスが出場しました。「病は氣から!」なんてずっと生徒に言っていたのですが、当日から喉の調子が悪く、いわゆる「風邪」を引いてしまうというなんとも情けない状態での引率になってしまいました。
試合では「勝たせる!」なんてことは考えず、ただ、普段通りかどうかを観察することに集中しようとコーチ席に着いていました。ですので「ここを攻めろ!」とか「相手のこの球に気をつけろ!」なんてことは伝えていません。自分の状態について把握できていれば自ずと相手とどう戦うかが見えてくるからです。自分の状態について不安で一杯になっている選手には力が抜ける考え方や戦術などは話をしました。しかし、そのような状態の選手に話が出来るかどうかと言えばなかなか聞いてくれないものです。普段からのコミュニケーションの善し悪しもあるかもしれませんが、選手自身の性格にも大きく左右されてしまうからです。 この、性格というのは直せるのですが、直そうとする本人の意志がなければ何をしようと全く効果が期待できません。また、そういう不安感や過去の嫌な記憶から生まれる情動に流されている自分に気づくことは並大抵では出来ません。そこには「瞑想」の訓練が必要になってくるからです。私も調子の悪い時には嫌な感情に引っ張られて(観察する力が不足しているため)悪口が出てしまうことがあります。言った後の自己嫌悪にはいつも悩まされます。 普段は自分に何らかの仮面(ペルソナ)をかぶせて社会的に装っていますが(例えば教師などの)、ペルソナが強ければ強いほど情動が押さえられています(シャドー)。これは解消されることは無く何らかの拍子にそれが表に出てくることがあります。相手の行動や発言に違和感を感じて過敏に反応するということは、実は自分の中にも同じようなものがあるということです。つまり、相手が悪いのではなく自分自身の中の普段は押さえられている情動が顔を出しているということなのですね。本当は「怒り」などは相手のせいではなく、自分自身の問題なのです。ですので、調子が悪いなと感じたときは、あまり近づかないように心がけています。マイナスをまき散らす結果になってしまいますから。 出来るだけペルソナを小さく、シャドーを抱えない生き方というのは大切です。そのための瞑想方法などを天外伺朗氏はいくつも提唱されています。普段から怒りっぽいと感じる人は著書をご覧になるとよろしいかと思います。 さて、近畿大会から話題がそれましたが、1年生が単、複とも優勝することができました。全国への切符を手にしたのでほっとしていますが、2年生の結果が今ひとつだっただけにこれからの指導の姿勢というものも考え直さねばならないと感じています。 |
遠征の目的
週末は福岡の方まで生徒をつれて遠征試合に出かけました。車の屋根にルーフキャリーをつけて荷物をその中に押し込み、車内も詰め詰めでした。今回の遠征の目的はもちろんゲーム内容も大切ですが、それよりも相手にとって都合のいい状態での試合をどう戦うか、十分に準備できない環境でいかに自分の準備を行うか、その方法を自分で工夫できるか、お邪魔させていただくということに対して礼を尽くすことができるか、ということを話しました。
出先ではコートに入るよりももっと以前から準備していかなければ力が発揮できないことが多いものです。イチロー選手は試合の4時間前からスタジアムに入って準備するそうです。今回それは出来ないにしろ、朝起きた時から、もしくはそのために早く起きるとかという意識が大切です。 白石豊先生の著書『勝利する心』にザリヤートカと呼ばれる朝の調整法が紹介されていました。 ザリヤートカ:散歩、ジョギング、ストレッチをしながらカラダを目覚めさせ、筋肉や神経の働きを活性化させるトレーニング 朝練というと「えっ?!」と拒否する人が多いですが、体と心を調整する体操、呼吸法を毎朝15分行うだけで見違えるように体が変化していくそうです。さっそく私も始めてみていますが、あまりにも自分の体の固さに驚かされ、これが柔らかくなるとと思うと少しワクワクしています。 帰りは一度頑張ってみようと大阪まで走りました。8時間ほどの長旅でしたがかなりのストレスでした。選抜やインターハイに出場することができれば、帰りもフェリーにしようと思います・・・。 |
部活ノート
7年前ほど前、部活でバドミントンノートを作るように、それを定期的に提出しなさい、ということを強制的にやったことがありました。しっかり書ける者や乱雑な者など様々でした。それを数年続けていくうちに見るに耐えなくなり、今度はプリントで形式を整えたものに記入するという方法で目標から課題、反省点などについて書いていくように変更しました。これも最初はいいのですがやはり書けない生徒が増えていきました。さらには落書きする者も出る始末。その後、ノートやプリントを出させるということは休止しました。
体育館の壁に掲示物を貼るスペースがあるのですが、そこに卓球のロンドン五輪メダリストの平野早矢香選手が高校生の時に書いていた部活ノートについての記事をさりげなく張っておきました。張り出してからもう半年以上経ちますが、先日、1年生の2人が「先生、部活ノートを1週間おきに見てもらってもいいですか?」と言ってきました。「いいよ」と返事すると、ほかに「毎日出してもいいですか?」という生徒もいたので「いいよ」と返事しました。 今まで提出は強制ではなかったにしろ、3年生の1人はノートを見てくださいと持ってきてはいました。しかし、今回は1年生ということで少し胸に熱いものが込み上げてきました。いつまで続くかわかりませんが全力でおつきあいしたいと思います。 |
ロンドンオリンピック男子シングルス
9月末の週末は日本体育協会のバドミントンコーチ義務研修会が行われました。今回はロンドンオリンピックの決勝からグループで課題を抽出し、練習方法をコートで実習してみるという課題でした。コートで実習するということなので技術面、体力面、戦術面での検討となるのですが、私自身は本当はメンタル面の課題抽出を行っていました。
研修では、男子シングルスにおけるショートサービスからのセンター位置でのハーフショットのやり取りからロビングを上げ、アタックしてからまたハーフのやり取りをする。逆にロビングを上げてアタックされたものをレシーブする、それを15本1ラリーとして25分行うというものでした。実際は時間の関係で10分程度でしたが、モデルになった学生さんにとってはかなり負荷の高いものであることがわかりました。もちろんトッププレーヤーをターゲットとしているのでそうなることはわかっていましたが。 さて、今回のロンドンオリンピック男子シングルスでは、リーチョンウェイとリンダンの対戦になりました。 1ゲーム目、試合が動いたのは、8−8の時のリーチョンウェイのクロスネットがネットインしたのがきっかけで、リンダンの感情がマイナス方向に動いたときでした。その差は最後まで詰まらずリーチョンウェイが勝ちきりました。 2ゲーム目、7−6(周辺)リーチョンウェイリードのところで、リンダンのプレーは柔らかくなってきてはいたのですが、クロスのドロップを大幅サイドアウト。しかし、ここでリーチョンウェイに油断の感情が動いたように思えました。8−8まで一気に追いついたリンダンの勢いが止まらず、リンダンの勝利。 ファイナルゲーム、ずっと僅差で試合が進みましたが、19−18リーチョンウェイリードのところで、リーチョンウェイに「勝ちたい」気持ちが出過ぎたのかバックラインのジャッジミスで失点。19−19になったところでリンダンのスマッシュアンドラッシュが炸裂。リーチョンウェイに後悔の念が残ったのかもしれません。リンダンの優勝が決まりました。 今回のシングルスでは、リンダンはマイナス感情に引きずられ、リーチョンウェイはプラス感情に引きずられているものと考えられます。 リンダンは出来て当たり前のプレーに関してはさほど反応せず、ネットインやジャッジミスなどの自分ではどうすることも出来ない出来事に敏感に反応します。 リーチョンウェイは、そういう不慮の出来事に対しては感情を表に出さず淡々とこなしていくのですが、「勝ちたい欲」に 感情を動かしてしまうことが今回のオリンピックという大舞台では起こってしまったのでしょう。 あくまでも私見ですが、そのように感じた試合でした。 |