体の使い方
情報が目に入ると視覚中枢に伝達されますが、すぐにその部分の上の空間認知中枢で距離とか間合いとか物の流れなどが認知されます。この部分はとても大切で空間認知能力の善し悪しがパフォーマンスに大きな影響を与えるそうです。どうすれば空間認知能力が高くなるかというと、両目を「水平」に保つことだそうです。バスケットボールのマイケルジョーダン選手は空中でもこの目線が常に水平に保たれているようです。バドミントンにおいても非常に参考になると思います。
次に、肩甲骨の動きです。肩甲骨は腕を使うときの「オモリ」なんですが、このオモリがずれていると腕をちゃんと使えないそうです。したがって肩を使うのではなく、肩甲骨を振るように腕を使うことが出来るとスマッシュなどでも先に伸びていくと言われています。イチロー選手は肩甲骨を振るトレーニングマシンを使って鍛えています。やはり大切な部分です。 3番目は大腰筋と腸骨筋です。ここが鍛えられている人はお尻の位置が上がっているので足が長く見えます。強い選手はこの筋肉のおかげで体軸が強いのです。水泳の北島選手やマイケルフェルプス選手はとても鍛えられているそうです。鍛えるヒントとなるのは赤ちゃんが行う「ハイハイ」です。このハイハイが速い人は運動能力が優れています。生徒には乾拭きで雑巾がけをさせていますが、これも良いトレーニングになっていると思います。 4番目は「可動体軸」。これは上半身と下半身の分離点、ちょうどみぞおちの奥の部分です。この部分を意識して運動をすると上半身も下半身もよく動きます。最もよいバランスはやや前傾している形だそうですが、卓球などではラリーで押し込まれて日本選手はこの体軸が徐々に立ってしまい負けてしまうということでした。 日本選手のジャンピングスマッシュを見てみるとこの体軸が立っているとのことでした。逆に中国選手は前傾しているということでした。やはり強さには秘密があるのですね。 以上をまとめると 1.水平目線の精密な空間認知能力 2.腕の動きを高める広い肩甲骨の可動能力 3.腰の切れを生む腸腰筋と安定体軸姿勢を作っている 4.上半身と下半身の運動能力を発揮する可動体軸とこの支点を意識するバランス体軸 です。視点、意識する運動や場所、トレーニングする部分など大変参考になる内容でした。 |
頭が良くなるには
学力が高いと頭が良い、低いと悪いと一般的には判断されます。それもおおよそは間違っていません。しかし、知識の量が多いことと頭が良いこととは少しずれていると考えられます。
長い間勉強すればするほど頭が良くなることはありません。4日前の夕食を覚えている人は少ないと思います。大切なことは、頭をただ使うのではなく「どう使うか」ということと、そういう「習慣を身につける」ということです。 頭の良い悪いは、3歳から7歳、10歳のときの習慣で決まるといわれています。しかし、その後はシナプス数を増やしていくことで学習していきます。ということは、その後年齢を重ねていったとしても頭は良くなります。しかし、習慣の善し悪しがシナプス数を増やすことに大きな影響を与えます。 脳細胞の数は3歳くらいまで右上がりに増えていきます。そして、その後脳細胞の「間引き」つまり減らすことが行われることがわかっています。この間引きが行われないとシナプス数の増加が鈍くなってしまうそうです。 「間引き」とは実際にどういうことなのかというと「悪い習慣の排除」なのです。 1.感動しない 2.「無理無理、大変、できない」と言う 3.すぐしない 4.途中で違ったことを考える 5.「だいたい出来た!」 6.人の話を聞き流す 7.人を尊敬しない 8.学習したことの確認をしない 9.損得で手を抜く 10.素直に全力投球しない このようなことが習慣になっているとシナプス数は増えにくいですし、技術も向上しにくいですし、土壇場でも力は発揮できません。 世界空手選手権大会で史上最年長優勝を成し遂げた塚本徳臣さんは伸びていく選手の特徴として「心が綺麗」と表現しています。米長名人も若き頃の羽生名人を「目が綺麗」と表現しています。 やはり、悪い習慣を排除していく努力を重ねている人には表に現れるのだと思います。 |
リズム
前回の林成之先生による講演から次の話です。
北島康介選手のコーチである平井氏が林先生に「彗星のごとく力を発揮するにはどうすればいいですか?」と質問されました。そこで、林先生は活躍した人たちの映像を種目関係なく流していると(岩崎恭子さん、カールルイスさんなど)リズムが大切であることを発見されました。 スポーツにおいては考えないとダメですが、考え過ぎてもダメです。うまく体は動いてくれません。ではどうすればいいのか。 考えると大脳の「海馬回」は興奮します。しかし、興奮したままだと死んでしまいます。海馬回の横には興奮を抑制する細胞がついています。この2つで興奮ー抑制ー興奮ー抑制を繰り返しています。その海馬回のリズムが、1秒間に4から8サイクルのリズムなのです。これを「シータリズム」といいます。このリズムになっているのが「モーツアルト」のリズムらしいのです。陸上のボルト選手もこのリズムになっていたということです。 林先生は「勝負脳」の本ではこのことを書きませんでした。なぜなら外国人に真似されるかもしれないと思ったからと言っておられます。それほど重要なことが含まれているのでしょう。 バドミントンでどう応用すればいいかわかりませんが、このリズムに入ると一気に気持ちが高まり、次にこれが運動系とつながり心技体が発揮できるようになります。 上位選手ほどバドミントンのラリーテンポは、相手に影響されながらも、要所要所で自分で作っているように感じます。早く触るだけでなく、間合いを取りながら相手の足を止める(リズムを奪う)やり取りを繰り返しています。自分のリズムを押し付けるか、相手のリズムを奪うか、リズムを崩されても作り直すか。 この辺りにヒントがあるのかもしれません。 |
気持ちをひとつに
林成之先生(脳神経外科医)による講演会がバドミントン指導者連盟主催により行われました。私は参加できませんでしたが「Badminton Journal」にまとめられていたので少しまとめてお伝えしたいと思います。
皆さんもダブルスにおけるパートナーとの関係について、うまくいったりぎくしゃくしたりといろいろな経験をされていると思います。しかし、気持ちがバラバラのままプレーしても、やはりかみ合うことなくいろいろなところで不具合が出てきます。林先生はそこで「神経の同時発火」という名前でもって気持ちをひとつにする大切さを述べられました。キーは前頭葉にあるのですがそこからの情報が一気に脳全体に広がり、さらには相手に伝わるというものです。語らずとも伝わるのです。 気持ちをひとつにする方法としては4つ。 1.相手を好きになる。 2.共通の目標を持つ 3.相手の脳に入る 4.相手を尊敬する 1と2はわかりやすいと思います。では、3番目はどうするのか。例えば子供がおもちゃを買ってとだだをこねている時に、「ダメ」とか「それは違う」などという否定後を使わないこと。「そうそう、私も買ってあげようと思ったんだよ。でも、今はお金がないんだ。」というように子供の言葉を使うことで脳に入ることができます。 4は「尊敬できるところがない」といってはねのけてしまっては元も子もありません。なぜ尊敬しなければならないかというと、そうしないと「勝てない」からです。尊敬する部分が見つからないときはとにかく理由もなしに尊敬してしまうというような自我を突き抜けた自らの姿勢が必要になってくるかもしれません。相手がどうではなく、やはり自らの未熟さ乗り越える以外にはないのかもしれません。 JOCのセミナーで林先生は「相手(監督やコーチも含む)を好きにならないと、皆さん北京オリンピックで力を発揮できないんです。どんなに嫌いだと思っても神様が皆さんに力を発揮させるために使わせたコーチだと思ってください。」と語ったそうです。 本当に強いペアはやはりお互いを尊敬し合っています。本当に強いチームは選手と監督、コーチがお互い尊敬し合っています。そこが大切なのだと思います。 |