大阪教育大学教育学部 卒業論文(2001) 伊佐 綾子

Ⅰ.研究目的

バドミントンにおいて、ストローク前後におけるフットワーク動作の速さは次のストローク動作の成否に関わる極めて重要な要因と言える。一般的に上級者は 初級者よりフットワーク動作が速い為、次の展開に素早く対応出来ていると考えられるが、その速さの違いがどのような要因によるのかを明らかにしたものはな い。
一方、Lnman(1966)、金子ら(1994)は基礎的な運動動作時の地面反カを分析することは各種スポーツにおけるパフォーマンスを評価する1つ の指針となると報告している。しかし、バドミントンのフットワーク速度に関して地面反力的に検討したものはほとんど見当たらない。
そこで本研究では、バックハンドでのロビング動作を打点の高さと動作速度を変化させて行わせ、その際の地面反力と着床時間を基にフットワーク動作の時間短縮に関わる要因を検討した。

Ⅱ.研究方法

  1. 被験者:右利きの本学女子バドミントン部員8名(競技年数5~10年)
  2. 実験手順:実験室内にコートを作り、シングルスライン上でネット隙から20cm、地面から30cmと155cmの2つの打点にそれぞれ上方からシャトルを吊した。
    左脚は各自の任意の場所に固定させ、また右脚は大きく踏み込んでインパクト出来るように位置させてバックハンドストロークでロビング動作を行わせた。
    その際、右脚が踏み込む床面に荷重計(垂直方向、前後方向、左右方向の荷重量を測定)を設置した。
    はじめに、上記の動作を全力で10回反復させ、それに要した時間から1回の平均所要時間を計算した。つぎに、各自の平均所要時間を基に50%~90%に 相当する動作速度を算出し、各動作速度はメトロノーム音で規定した。1動作課題は15秒間とし、高さ2段階×速度5段階×2セットの計20試行させた。こ の際に筋疲労をなるべく軽減するため、1セット目は動作速度の遅い課題から始め、2セット目は動作速度の速い課題から始めた。10例を平均し各動作値とし た。

Ⅲ.結果

1.動作速度と荷重量の関係について
動作速度が遅くなると、全被験者平均の垂直・前後方向の荷重成分積分値は有意に増加した。
左右方向の荷重成分においては、8人中4人に右方向+、8人中2人で左方向+、そして、8人中2人で左右方向±を示す3つのパターンか認められた。しかし、各パターンと平均所要時間との関連性は認められなかった。
2.動作速度と打点別の着床時間について
動作速度別に着床時間の割合を見ると、低い打点の60%-80%、60%-90%の間でのみ有意な差が見られた。高い打点と低い打点の間では、70%、80%、90%の動作速度における着床時間に有意な差が見られた。

(図1)

3.単位時間あたりの荷重量とピーク値について
垂直方向と前後方向においては、動作速度の増加に伴い積分値は減少したが、単位時間あたりの荷重量は有意に増加した。また、ピーク値も同様に有意に増加した。

Ⅳ.まとめ

上記結果から、着床期の時間短縮ではなく、単位時間当たりの出力や瞬間的な出力を高めることが動作速度を短縮させる要因の一つであることが示唆された。

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