大阪教育大学教育学部 卒業論文(2001) 青木 秀樹

Ⅰ.研究目的

ジャンビングスマッシュ(以下、J.smash)は、オーバーヘッドストロークから打つショットの中で最も打点が高く、ジャンプ無しで打つスマッシュ (以下、N.smash)に比べて打ち下ろし角度がつくことや、打点の高さに選択の幅ができることで、相手に取られにくくなる(竹鼻、1999)といわれ ている。したがってJ.smashは、打球の速度に関わらず、総合的に攻撃的なショットであると考えられる。
しかし、初級者にとってJ.smashは高い打点を獲得することや、インパクトのタイミングを計ることが困難なストロークであると考えられる。
本研究は、上級・中級・初級者におけるJ.smashとN.smash時のシャトル初速度、インパクト高およびインパ
クトのタイミング、また、垂直跳び、素振りと実打によるJ.smash時の跳躍高を比較することから競技力に伴うパフォーマンスの差違を明らかにしようとした。

Ⅱ.研究方法

  1. 被験者:右利き男子で、上級者2名(社会人でインカレ出場経験者)、中級者2名(本学バドミントン部レギュラー)、初級者2名(同部非レギュラー)の計6名を被験者とした。
  2. 課題動作:各被験者に、コート正面から打ち上げたシャトルを、J.smashとN.smashでそれぞれ20本打たせ、別途J.smashの素振りも10回行わせた。
  3. データ配録:各動作を60コマ/秒のデジタルビデオカメラで右側方から撮影し、インパクト高とシャトルの初速度を算出した。また、足の離床からインパクト及び着床までの時間はフットスイッチとインパクト音をもとに1/1000秒単位でそれぞれ計測した。
  4. 分析の視点:
    1)J.smashとN.smashのシャトル初速度の比較
    2)J.smashとN.smashのインパクト高の比較
    3)J.Smashの滞空時間と離床からインパクトまでの時間との割合
    4)垂直跳びに対するJ.smashの素振り、J.smash時における跳躍高の割合

Ⅲ.結果

1.J.smashとN.smashにおけるシャトル初速度について
初級者の1名を除き他の5名においては、J.smashとN.smashのシャトル初速度に有意差はなかった。有意差が認められた1名の初級者において は、N.smashのほうが速かった。また、競技成績の順でシャトルの初速度に有意差が認められた。

(図1)

2.J.smashとN.smashのインパクト高差について
全被験者ともJ.smashのインパクト高は、N.smashより有意に高かった。しかし上級者での両smashにおけるインパクト高差は平均35.6±13.0 cmであるのに対し、中・初級者では平均18.7±11.6cmであり、上級者のほうがインパクト高差が大きかった。

(図2)

3.J.smash滞空時間と離床からインパクトまでの時間について
各被験者とも、インパクトのタイミングは、跳躍の頂点よりやや落下した時点(跳躍高を100%とすると平均81.2±9.7%)であった。

4.垂直跳びに対するJ.smashの素振り・J.smashにおける跳躍高の割合について
垂直跳びの跳躍高を100%としてJ.smash素振りとJ.smashの跳躍高の割合をみると、上級者では平均88.3±8.0%、70.1±4.6%であるのに対し、中・初級者では平均73.9±13.0%、60.8±12.2%であった。

Ⅳ.まとめ

上記の結果より、インパクトのタイミングに有意差は認められなかったが、シャトルの初速度、インパクト高、跳躍高は個体間で差がみられた。

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