地球に立つ
イチロー、タイガーウッズ、マイケルジョーダンなどをはじめ、最近では羽生結弦選手など様々なスポーツの一流プレーヤーを見てみると、颯爽と立ち、力まず、しなやかなのに力強いプレーをしています。いずれの場合も「正中線と呼ばれる天地にのびた一線のようなもの」という身体意識ができているためです。(センター・体軸・正中線: 高岡英夫著)
バドミントンにおいても、トッププレーヤーは力まず、しなやかにプレーしています。速い動きは、正中線を通したバランスを保つことで地面にしっかりと立ち、その重力を移動方向の力に素早く変えることで実現されているのです。逆にバランスを欠いた立ち方(フットワーク参考)から始まる移動は無駄な動きを伴い、遅く、力を浪費するものとなってしまいます。
安定した立ち方は、まずつま先立ちになって3秒維持します。そこから両かかとをストンと落とすだけで安定した立ち方となります。(藤平信一氏より)その感覚を掴んでおくとバランスを失った時の修正に役立つものと考えます。また、つま先重心で安定する人と、かかと重心で安定する人というタイプにわかれます。私はかかとタイプですが一度調べてもらうと自分のタイプがわかり動きがスムーズになるかもしれませんね。
逆手の働き
ハイクリアなどでストロークをする時、ラケットをシャトルに当てようと強く振って打とうとしますが、力に対してあまり飛んでいないと感じるときは逆手が上手く使えていないことが多いです。
シャトルに対してラケットを後ろ方向へ引いていくと同時に、逆手は前へ大きく出して半身を作ります。ラケットを振っていく動作の逆方向に逆手を後ろに引いてやることでスイングはとてもコンパクトになり、ラケットスピードは上がります。視線もぶれにくくなるためエラーは減ります。
特に逆手の指先の感覚がとても動き出しに重要な役割を担っていると考えられ、ストロークのきっかけは、逆手の指先から始まっているのではないかという感覚もあります。上手な人の逆手の指先は共通している形が見え、興味のある方はそのあたりも見てみると面白いかも知れません。
ラケットヘッドへの意識
ラケットも改良とともに軽くなっていますが、その取り回し方によってはバランスが崩れたりタイミングが遅れたりします。逆手の使い方では指先の意識が重要と書きましたが、ラケットを持っている方ではラケットヘッドへの意識がとても重要になっていると考えられます。常にラケットヘッドがどの位置にあるのかは感覚的にわかっている必要があります。
ラケットヘッドは出来るだけ顔の近くを移動させる。
ラケットヘッドをラリーのタイミングに合わせ少し上げる。
この2点をイメージするだけでもバランスを保て、タイミングを合わせやすくなり、移動の動き出しのきっかけもつかみやすくなると思います。
体をゆるめる
宮本武蔵の「五輪書」に「たけくらべという事」についての記述があります。「敵に迫るときは、背丈比べで自分の方が勝つと思うほど、身を思い切り伸ばす。 足、腰、首を伸ばせ。」これは、緊張して縮こまった関節をいったん伸ばし、緩めることで本来備わっている能力を引き出すという考え方です。
また、バランスを保つためには、平衡感覚に敏感でなければなりません。股関節や肩関節をはじめ各関節に関わる筋肉が緊張していると、前後左右への傾きに気付けなくなってしまいます。気付けないという事は動き出しが遅れたり、バランス回復に時間がかかったり、回復できない体勢から動き出すことになってしまいます。
ラリー前に掌を上に向けてから、内回しにまわして手の甲を上へ向ける動作だけでも肩の力が抜け、良いパフォーマンスにつながると言われています(甲野氏)。
手足を体から切り離す意識
「今日は体が軽く感じる」、「今日はなんだか体が重い」とよく耳にします。風邪などの症状を除き、実際にパフォーマンスがいいのはどちらでしょうか。前述したように、各関節が緩んだ状態にあると体は重く感じます。したがって、試合前などに「体が軽く感じる」と、各関節が緊張していることもあるのでいいパフォーマンスは期待できないのです。
上肢、下肢を体幹から切り離すよう、ストレッチングや細やかに動かす運動(前後左右にゆすったりぐるぐる回したり)を行うことで、体の重みを感じるように意識することが大切です。
ハムストリングスで立つ
正中線を通して立つためには、大腿四頭筋(太ももの前側)ではなくハムストリングス(太ももの裏側)を使う必要があります。そのためには、つま先ではなく踵よりに重心を置いて地面に立ちます。「五輪書」にも、「足運びはつま先を少し浮かせて…」と書かれています。最近ポピュラーになっているバランスボードなどを使ってトレーニングするのもいい方法です。