地面にしっかりと立てていること
最も意識すべきことは、地面に対してバランスよく重さをかけることができているかということです。視線が斜めになっていたり、左右、前傾や後傾等の体勢 になると床を捉えることが難しくなり、さらにバランスを回復させるために「力む」原因となります。写真はチャンドラ選手(インドネシア)ですが、視線、体勢ともに次への構えが実現されています。
バランスは回復させるもの
バドミントンは相手のタイミングを外したり、欺いたりしながら如何に有利にゲームを運び、先に21点を取るかを競うゲームだとも言えます。したがって、逆にバランスを崩されることは多くの場面で起ります。
「バランス」を回復するには、まず、バランスの乱れ具合を体で感じ取らなければなりません。これを感じるのはもちろん神経ですが、関節や筋肉などが過緊張した状態だと感じにくくなってしまいます。遠くのシャトルを打ち返す場合、最後に大きく踏み出した一歩は筋が緊張しているかもしれませんが、そこで踏ん張り、我慢するのではなく、ストップした後はいち早く脱力して平衡感覚を意識し、その力を上手く回復の方向に運動を変換することが大切です。例えば、右利きの人が左前の球を返球する再、前への勢いが強いため、右足だけで止まらず、さらに前に左足を着いて力を逃がすフットワークなどがそうです。
勢いよく前へ
耐えるのではなく
力を前方向へ
左足を前に着き体勢を回復
打った球を見ない
打った後にシャトルを眺めてしまい、次への準備に遅れてしまうこともあります。特に初級の段階ではシャトルがどう飛んで行っているかを確認したい気持ちはわかりますが、相手のインパクトまでシャトルを見ていると相手からの返球にいい体勢でタイミングを取ることが難しくなります。打った後はできるだけ早く相手の方に目を向け、できるだけラケット面を見るようにしましょう。相手が打ってくるときに面の方向や強さを見ておかないとタイミングがずれて動き出しが遅くなってしまいます。
バドミントンは遅れて動き出すことが多いスポーツです。早めに動き出しすぎると誘われて逆を突かれてしまいますので注意が必要です。
戻りは全力、打つ時は柔らかく
シャトルを返球するときには打つ場所を決めているはずです。なのでできるだけ早く次返球されそうなショットが取れるように戻りたいですね。打った後の1歩は全力でその方向へ移動しましょう。クロスに打った場合はセンターラインをまたぐくらいまでは戻りたいですね。しかし、そのまま力みが残っていると次の移動始めが遅れてしまいます。プレーイングセンターで構えるときには力が抜ける正しい形を作りましょう。下半身は下げますが上半身はやや起こし気味に構えます。ラケットヘッドはやや上げておきましょう。そして、シャトルを打つときには床を「ドン!」と鳴らすのではなく、優しく着地させるように心がければシャトルのコントロールを比較的邪魔しないようにできます。
速く動き出すには
「地面にしっかりと立てている」ことが意識できるようになるには、ある程度脱力できていて、体の重みを感じることが大切です。「体がふわふわした軽い感じ」というのは、実は脱力ができておらず、関節がこわばった状態であるといえます。それは、腕や足などにも同じことが言え、「今日は腕が軽い、足が軽い」と感じると、かえって力みから空回りした結果が出てしまいます。力んだ状態だと、大変な時間ロスが生まれます。最初から脱力が実現できていると(この場合構えのための最低限の緊張はしています)、行きたい方向への動き出しに無駄な修正を加えなくても良くなり、時間のロスを解消すること ができます。
「つま先で地面を蹴って速く動く」?
「つま先で床をしっかり蹴れ」などという指導がなされています。しかし一概に全てそれが正解というわけではないようです。バランスがつま先タイプか、かかとタイプかで違いがあるためですが、宮本武蔵の『五輪書』などは、 「足運びはつま先を少し浮かせて、踵(かかと)を強く踏むようにすべし」と書かれています。踵はL字型と思われがちですが、実は①のようにT字型をしています。したがって、②のように後ろに体重をかけるようにすると自然と前に重心が移動します。前への移動を行う場合は、特にこの動きが重要になります。かかとに重心をおいた方が動きやすいという人は参考にしてみてください。
また、つま先立ちになると、③のように腓腹筋やひらめ筋が緊張します。膝が前へ出るためバランスを保つために大腿四頭筋が緊張します。この大腿四頭筋 は「ブレーキ筋」とも呼ばれ、特に前への動き出しを抑えてしまいます。バドミントンの動きはほぼサイドステップで移動します。「後ろ走り」はほとんど使いませんので、動き出しでこの大腿四頭筋が緊張しているとかえって動き出しが遅くなってしまいます。
そこで、④のように、「アクセル筋」と呼ばれるハムストリングスと「達人の筋肉」と呼ばれる腸腰筋を使って踵にも重心を置くことのできる構え方を行うことが大切になってきます。この筋肉を使うイメージは持っておきましょう。
ハムストリングスを鍛えるのはストレッチングがいいと思います。写真のようにT字バランスを行い、股関節の前側を折りたたむよう意識し、お尻の下側からハムストリングスが伸ばされていく感覚を保ちながら保持します。
足運びはサイドステップ
「3m以内の反復運動では”横走り”が速い」(衣笠:筑波大)という研究結果からもそうですが、トッププレーヤーのフットワークは、ほとんどサイドステッ プで移動しています。足を入れ替えるよりもサイドステップの連続の方が早く移動できるのです。コート内を走り回っているように動くと、逆にシャトルに追いつかなくなってしまいますので、しっかりと初期段階で正しいフットワーク技術を習得しましょう。そして、サイドステップの出だしには、膝角度を約135度に維持し、あらかじめ負荷をかけておくと(プレローディング)、膝関節の最も効率の良い運動を得ることができ、筋力のロスを少なくして移動することができます。
強い筋力は必要か
スクワット等、バドミントンのトレーニングとして下肢に対する負荷の大きいトレーニングはよく行われています。しかし、バランスを保つ動き方ができてくると発揮する筋力を小さく抑えることはできます。上述したように腸腰筋、ハムストリングスは意識しておかなければなりませんが、バドミントンでは「ストップ」も行うスポーツです。したがって、大腿四頭筋やふくらはぎに関わる筋肉も使えなくてはなりません。また、大腿直筋などは第二の心臓とも呼ばれるほど重要な筋な ので、心肺能力にも影響を及ぼします。
大切なのは、大腿四頭筋とハムストリングスのバランスです。強すぎる筋力は、それに頼ってしまうと多くのエネルギーを消費してしまいます。太ももを大きく鍛えている選手がその筋力で踏ん張りすぎ、足が痙攣してしまうのをよく見かけます。筋の質の問題もあるかもしれませんが、脱力なしにラリーを最後まで駆け抜けることは難しいのです。
センターはコート中央?
ストローク後は返球をとらえるためセンターポジションへ戻ります。しかし、必ずしもコートの中央に戻るとは限りません。戦術上、返球位置に対する最適な位置に戻ることが大切です。この位置を「プレーイングセンター」と呼びます。
(参考文献:センター・体軸・正中線「高岡英夫著」)
<フットワーク例>
リアクションステップ
移動したい方向に対して速く移動するためには、足を着く位置やタイミングが重要となります。前後左右に移動するときの足の位置にはそれぞれ基本となる位置があります。矢印は動きたい方向、数字は接地する順番です。
上級者になればなるほどこの足の位置取りをジャンプして行わずに、抜重をして足を移動させます。やや高い腰の位置から膝を抜いて少ししゃがみこむイメージでしょうか。タイミングがまだ取りにくい初級者はジャンプから始めればいいですが、ジャンプが高すぎてしまうと相手にタイミングをずらされるような経験をします。それくらいのレベルになってくるとジャンプしないリアクションステップを是非習得してください。
<リアクションステップ例>
・右前方へ
・左前方へ
・左後方へ
・右後方へ