「点数を取る」を考える⑤
前回はフォームで打つ場所を騙ました。今回は時間を騙します。早く言えばタイミングを狂わせるということですね。
2)時間を騙す
①強打を見せる
もう40年ほど前でしょうか、「ドカベン」という野球漫画が面白くて読んでいました。いろいろ特徴があるキャラクターが出てきました。最後の敵は義経と武蔵坊弁慶ですからすごいですよね…。さて、そのキャラクターに白新高校の不知火守という投手が出てきます。その投手は162キロの速球が武器でした。しかしタイミングが合えば軽く飛ぶということで次第に打たれてしまいます。そこで開発したのが「超スローボール」。手首と指だけで速球とスローボールを投げ分けます。ボールリリース直前に相手の様子を見て、速球を待っていればスローボールへ、スローボールを待っていれば速球へと変えるその技はまさに「無敵」。読んでいてワクワクしました。主人公の山田太郎も全く打てませんでした。本には「強靭な手首を鍛え上げた」と書かれていました(そのあたりはあまり触れませんが…)。
バドミントンにおいてもやはり強い球は武器です。私も強烈なスマッシュにあこがれて練習を積み重ねました。どうやったら速く打てるんだろう、重いスマッシュって何だろうと考えていました。試合前の基礎打ちでは思いっきり速い球を打って「これで相手はビビらないかな?」なんて考えていました。背は低かったですが幸い足が強かったので早くシャトルの後ろに入り、さらにジャンプして打つことができるようになり、それが武器となっていきました。しかしレシーブされだすとジャンプが負担となり足が疲れてきて徐々に打てなくなりました。
②切る
どうにかならないものかと悩んでいた時、同志社大学での練習でハイクリアを切りながら打つ「スライスドクリア?(自称)」というショットに出会いました。スイングは速く、シャトルの初速も速いのですが失速してコート内に落ちます。打たれた瞬間は「アウトかな?」と思うような速さでした。相手の方は背が高く、ほぼ並行に来るこのクリアに何度もコート奥へ追い込まれました。持ち帰って練習する中で、これはスマッシュにも使えないものかと切りながらスマッシュする、いわゆるカットスマッシュの練習をしました。強いスマッシュとカットスマッシュで相手を振り回すことができるようになってきました。どのくらい切ればどのくらい失速するかの感覚は大切です。ガットの質やテンションによっても変わるので色々とお試しください。
スイングは速いですがショットは失速する。これで相手のタイミングをずらして、しかも相手にシャトルを下で触らせ、上げさせ、もしくは前へ繋がせて攻め続けました。
③コンパクトにスイングする
いい体勢を作って打てれば強打と切るショットの打ち分けはさほど難しいことではありませんが、試合では最初から読み通りの甘い球はなかなか上がってきません。サービス周りからいろいろと工夫をしたとしても上には上がいます。足は止められます。そういう時に大切なことは「コンパクトにスイングする」ということです。しっかりと左手を上げて右肘を大きく後ろに引いて…という時間が相手のショットによっては作れないことが多く起こります。今までもラケットヘッドを早く上げたり、半身を作らないなどのお話をしてきましたが、そのようなフォームでも今の道具の性能では十分に強い球を打ち出せます。また、コンパクトにスイングできるということはシャトルを打つまでに「間」を作ることができるので、相手は、ラケットを上げる→テイクバックする→ラケットがインパクトに向かうというスイングの流れでショットを読むことが難しくなります。つまりタイミングをずらすことができるようになります。逆に言うと、大きいスイングばかりだとタイミングとショットの種類が読まれやすいということですね。
高校生時代に筑波大学に練習に行かせていただいた際に、「チェックスマッシュ」というショットを教わりました。聞いたことがなかった名前だったので「何それ?」と最初は思いました。このショットはオーバーハンドで最もコンパクトに打ち出すことができます。線で打つものではなく点で打つので難しいのですが、シャトルを「ピンッ」と弾くように下に打ちます。ラケットを上げ、直後に弾くように打つので相手にとっては意表を突かれたショットとなり、タイミングを外せます。ラウンドなどに追い込まれたときには有効に使えるショットです。
④前で取る
打つ時に難しくなる一つの要因は、ラケット準備時間が少ないことです。フォアハンド側からバックハンド側へ、またはアンダーハンドからオーバーハンドへとラケットを移動させるだけでもその準備時間は削られます。バドミントンではどのようにして「相手のラケット準備時間を削ることができるか」も大切な攻め方の一つです。それが顕著に表れるのが強打のあと。特にスマッシュは自分のコートに返ってくる時間が短いので注意が必要です。大好きなアニメの一つに「Hunter×Hunter」という物語があります。主人公のゴンがヒソカという達人の胸についたバッジを取るというシーンがあります。しかしどんなに気配を消して近づいても相手は達人なので察知されて攻撃されてしまいます。そこでゴンが考えたのが、ヒソカがほかの人のバッジを取ろうと襲う瞬間に生まれる隙を利用して取るというものでした。これを見た瞬間にバドミントンで「(特に決めようと)スマッシュする時」もしくはその直後に隙は生まれると思いました。その隙にさらに早いリターンを返せば効果は大ということです。
具体的には相手スマッシュに対して、いつもよりも前に出て上でラケットを合わせ、押し込むようにして相手の前へシャトルを運ぶといううものです。難しいかもしれませんが、これは藤本ホセマリさんの講習会で取り上げられていましたので、練習してタイミングの感覚を磨きましょう!