バドミントンを考えるコラム#45 「一流選手の言葉」を考える④

前回に続き、福万尚子さんの講習会から学んだことをまとめてみました。

 フットワーク指導の後は実際にシャトルを打つノック形式練習を行いました。「何がいいですか?」と聞かれたので「基本のオーバーヘッドストロークとレシーブで」とお願いしました。

 オーバーハンドの打点は?

1.左手で取れる位置まで下がる
2.左手は伸ばしてとる

 この2点に重点が置かれていました。打点まではどう走ってもよく、とにかく体の正面でシャトルを左手で取れる位置まで早く入って、最後はステップで調整するのが基本でした。よく指導場面ではステップでリズムをつけながら後ろに入っていくのを見かけますが、そんなリズムよりも、とにかく全力でシャトルの後ろに入ることを強調されていました。確かにリズムを気にするあまり打点に入るのが遅れてしまい、リズムがずれることで足がもつれそうになっている人も見かけます。リズムよく移動できると、なんとなくかっこよさや、やってるな感が出るのですが、打点がずれてしまうとショットは乱れてしまいます。

「打点を左手を前に伸ばしたところに持っていければ、自然と角度はつけられる」

 実践されていましたが、左手の前にシャトルを持って行ってから打つと常に安定した角度でスマッシュが打たれていました。角度をつけようと手首を使うと余計に浮くので注意が必要とも話されていました。いわゆる野球でいうスナップですが、上手な人を側から見ているとこれで打っているように見えてしまいます。しかし実際は肩関節から腕ごと前へ振り出し、インパクトに向かって内旋や回内を行うので手首を曲げているように見えてしまうわけですね。私はもはや積極的に回内運動をするのではなく、肩甲骨から腕ごと前へ押し出すイメージ、打った後は脱力という感じを意識して打っています。

「目線を動かさない」

 打点まで早く移動し、シャトルが落ちてくるまでステップで調整する。しかしこの時にできるだけ目線を動かさないことが大切であると話されていました。ラダートレーニングで細かく早いステップをしながらも正確に足を狙ったところに置いていく目線のブレの少なさがこういうところで活かされてくるのかと思いました。よくシャトルを打つ時に目線がブレている、頭を揺すっている人を見かけますが、打つ前のステップでも目線がブレていることもあります。できるだけ上下動しないようにステップするのは難しいかもしれませんが、安定したショットにはとても大切であることがこの言葉に表れていました。自分で打つ前のフォームを動画などに撮り、チェックしてみるのもいいかもしれませんね。

「打つ前は最も遠いところへ打てるように視界をキープする」

 そこに打てるかどうかは視界をキープすることで大きくイメージが変わってくるのでしょう。この言葉はとても新鮮で衝撃的でした。そういえばこの球はここに打っておけばいいか〜とついつい同じ選択をしている自分の姿を思い出しました。最も遠くに打てる、つまりフォア奥からだとクロスの奥に打てる視界を崩すなということですが、なかなか難しいことですよね。しかし相手にとってはクロス奥に打ってきそうなフォームに見えるので前に詰めることを迷うかもしれません。自分のフォームが相手にとってどう見えているかは戦術的にも非常に大切なので最初はできなくても意識し続けることが大切と話されていました。私もまた実践していきます。

 ダブルスでは最初から攻撃できれば最後まで維持することが大切ですが、なかなかそうはさせてもらえません。「レシーブから攻撃に変えていきたいですね」ということで最後にダブルスのレシーブ練習に入っていきました。

「数cmでも前に出て相手を押し込んでいく」

 考え方として、相手のスマッシュをズバーンと切り返して一気に前に詰めていく!というものではなく、少しでもいいから徐々に徐々に前に詰めていくイメージで切り返していくそうです。徐々に前に詰めていく一方で、相手が押してきたら徐々に下がりながら前に詰めるチャンスを伺うそうです。よく守る時に一気に後ろに下がろうとして、時間がなくて後ろジャンプしながら下からラケットを上げてレシーブしてしまうことがあります。これでは沈めることができずに守りから攻めへの切り替えがとても難しくなるので、前後に出たり下がったりする調整を細かく行うことが大切だと話されていました。攻める時も一気に前に出るとタイミングがずれたり、打点がずれることがありますし、守る時も下がりながらのショットは非常にコントロールが難しいです。詰将棋的な感覚かなと思いました。

「スイングは横振りにならないこと」

 レシーブ後は前に出ることが前提なので横振りではダメだと話されていました。縦振りをすると振り抜く反動で前に出やすくなります。横振りだと横移動になりやすいとのことでした。そのためには常に体の正面でシャトルを打てるように細かくステップを使って移動し、肘から振り上げてラケットを縦振りしていくとのことでした。振り上げたラケットはそのまま上で構えて相手の次のショットを上で押していくのも効果的ですと話されていました。なるほど!と感心しながら聞いていました。

 背が低いにも関わらず、相手の攻撃をうまくしのいで攻撃に転じていく。一気に逆転を狙うのではなく、少しずつでも勝つための確率をあげていくという考え方の根本がここに表れていたように思えます。

ーひとことー
 現在、福万さんはアメリカでトップレベルのジュニア指導にあたっておられますが、とても貴重な経験ができました。やはり直接会って体感してみないとわからないことが多くあることもわかりました。ぜひアメリカでの活躍にもみなさんご注目ください!

福万尚子さんのプロフィールはこちらからご覧ください

スポンサーリンク
おすすめの記事