バドミントンを考えるコラム#33 「ダブルスの役割」を考える①

 ダブルスのフォーメーションは?

 シングルスは相手からの返球を自分自身が取らなければならないので役割は単純です。決められないように相手コートに入れる、もしくは自分が攻め続けられるように返球することです。しかしダブルスでは2人いるので大きく分けて、前衛、後衛、サイドバイサイドの右側、左側の4ポジションがあります。攻め方、守り方の考えはペアによって変わることもあり、前後左右をあまり入れ替えない場合もあれば、くるくる回りながら入れ替わる場合もあります。動画を通していろいろなダブルスを見ていると、やはり基本的に入れ替わらず、強い形を維持することが多く見られました。前衛が得意な人はすっと前に入り、後衛が得意な人は沈めながらペアに前のスペースを空けて入るよう促すような動きが見られました。

 強い球で決めたい欲望

 サービスからのやり取りでは相手のいないところに押し込んだり、あえてぶつけたり、または前衛と勝負するために沈めたり、かわしたりするのが基本です。レシーバーは押し込んだ後、そのまま前への返球を狙うのが基本ですが、強い返球ばかりを待っていると逆サイドコースに打たれるとあっという間に形勢が逆転して上げさせられる展開になります。私がこのショットでよくかわされてしまうのでなぜなのかを考えてみると、「相手の強いレシーブを強く打ち下ろして決めたい」という欲のイメージが強く頭に残ってしまい、その場所に居着いてしまっていることに気づきました。逆に強い球をラケットに当てるだけだと「負けたような感じ」を持ってしまっていることにも同時に気づきました。私が理想としているプレーヤーのヘンドラ・セティアワン選手(インドネシア)のプレーを見てみると、前衛で強くするどいレシーブに対してはラケットを振って打ち込むのではなく、しっかりと止めて沈め、次の球へのタイミングをはかっていました。一方、私自身の前衛を見てみると、緩い甘い球でしか落とすことしかできていなくて、相手にとってはさほど難しい球ではなく、逆にそこから攻めに転じる展開へと運ばれていました。さらに観察するとラケットを上げるのが遅く、ラケットを上げたときには頭上をシャトルが越えていることも多くありました。ラケットを上げるのが遅いとその方向へ移動することも遅く、例えばクロス方向へカウンターレシーブを打たれた時にラケットを先導させて後方へ下がるのも遅れてしまいます。つまり前衛の役割を全く果たせていなかったことに気づきました。

 前衛の役割

 前衛の役割は相手が前へ返球してきた球を押し込んでさらに追い込むこと、強い返球に対して当てられる範囲で沈めて再度上げさせること、逆サイド奥へのカウンターレシーブを沈めて攻め続けること(特に後衛のバックハンド側)でしょうか。練習相手の前衛を見てみるとラケットをラリーテンポに合わせてラケットヘッドを確実に上げて打ち下ろせるタイミングができていて、当てて沈めることができる上に、余裕があればそこから強く押し込むことができていました。練習後、相手の方に話を聞いてみました。すると「前衛からのプッシュ(押し込み)がないので安心してレシーブできる」とのことでした。

 攻めるイメージ

 前衛で返球を止め、できれば押し込みたいのにできない。なぜできないのか。もちろんラケットを上げる準備が遅い、位置が前過ぎたりセンターに寄りすぎていたりするなど時間的、位置的な問題もあると思います。しかしそれ以上に、ペアのスマッシュの音や、後ろから頭上を越えていくスマッシュのイメージをよく覚えていませんでした。覚えていないということはその音でのショットの強さ、コースでどういう展開になったのかといういいイメージも作れていないことになります。攻めのイメージが感覚的にぼやけていると感じました。

 不安感

 攻めるイメージが曖昧だと思い切って動けず、エラーをしないためだけの受け身イメージになってしまっている可能性があります。もちろんエラーしないようにすることは大切です。しかし甘い球をきっかけに攻めに転じられてしまうと、エラーを誘われる確率が上がってしまいます。まさによく言われる「攻撃は最大の防御なり」ということでしょうか。その時の私の前衛での思考は、「クロスカウンターレシーブを食らったらどうしよう」「強いレシーブが来たら止められないかもしれない」というマイナスイメージ、受け身のイメージが多くなっていることに気づきました。「前衛から打ち込んで決めに行かなければ、いつか切り返されて不利になってしまうかもしれない」とまで思っていました。このイメージでは打ち込めるはずもありませんし、上で止めて落とすこともできない可能性があります。「強いペアは2人で相手1人を攻め切る」と話されていました。最初から振られるイメージがあると後衛のスマッシュをより効果的に前衛からも攻め続けられない可能性があります。

 感覚を経験する

 前衛は基本的に相手のレシーブを触れる範囲で上から下へ落とすだけで大丈夫だと思うこと。そのためには“レシーブで追い込まれたらどうしよう”イメージではなく、「止めて次を待つ!」とイメージができればいいと思います。ペアのスマッシュ音やタイミング、コースを視覚と聴覚、床との触覚でしっかりと感じてラケットヘッドを準備すれば、うまくいった時とうまくいかなかった時の違いが感覚とともにイメージ化され記憶に残るようになります。それを体験してからうまくいかない時のイメージでは「球を捨てる」ことができるようになると思います。「球を捨てる」判断が早くできるようになると後衛の迷いが少なくなります。そうなれば2人のコンビネーションがうまくつながり2人で相手1人を攻め切ることができるようになると思います。

次回は後衛の役割について考えたいと思います。

-ひとこと-

自分のイメージと実際の動き、フォームがずれていることは実は多く起こっていると思われます。映像で見てみるとそんなにラケットが上がっていなかったのか、と驚かされました。トップ選手のいいフォームを見ながらイメージして、それを実際にやってみたのを見てみて振り返る。この作業自体でもいい練習になると思います。

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