バドミントンを考えるコラム#35 「ストリングテンション」を考える

 現在、メーカーが推奨するストリングス(ガット)のテンションは18~29ポンドくらいまでと幅が広いのですが、私も自分に適したポンド数はどのくらいなのかを色々と試してきました。中学生の頃は手張りでしたので自分に適正なガットテンションなんて数値ではわからず、手で弾いてみた時の「ポンポン」という音でこれくらいかなと判断していました。ガットを張っている途中で引っ張りすぎると切れてしまうこともあるので恐る恐る張り上げていたことを思い出します。当時はラケットのグリップ部分やその形の巻き器で巻いて引っ張り、目打ちで止めていました。目打ちも専用のものではなく、裁縫用で先が尖っていました。たまにガットを傷つけて切れることもあり、差し込むときは本当に神経を使いました。今の専用目打ちは先が丸くなっているのでそんな心配も必要ないですね。ガットが切れると継いで張りました。当時も様々なカラーが出ていたので、白いガットのラケット面の中に数本違う色が混じって継いでいるなどは当たり前のようにありました。これやっていると「自分で張れる」という少し優越感を感じていました。
 高校生になると分銅式のガット張り機が市販されるようになり使わせてもらっていました。分銅の位置によってテンションを変えられるので、初めて「ポンド」という目安を知りました。当時は24~25ポンドくらいで張っていたと思います。しかし分銅式では30ポンド以上などの高いテンションを張ることはできなかったので、分銅を手で下へ押さえて張力を上げるという荒技もありました。
 社会人になってからは、部活でスプリング式のガット張り器を購入していたのでそれを使わせてもらっていました。生徒たちは33ポンドなんていう張力で弾くと「キンキン」なんていう金属音をさせていました。私は「カンカン」くらいの28ポンドでした。ガット張りをショップにお願いしたこともあります。なんでも特別な通し方と張り方があるので弾きが全く違いますというものでした。依頼する前にそのラケットを使わせてもらいましたが、確かに楽に打てました。しかも手の方へ来る衝撃は小さくなっていました。その張り方はもちろん企業秘密なのですが、現在では「○○張り」というものもいくつかあるようで、多くの方がいろいろと試されているようです。ラケットを送って張ってもらい、返送してもらう。しかし自分で張っている者にとってはやはり高価だと感じてしまうのでした。自分でできるうまい張り方を教えてほしいものです…虫のいい話ですね。

ゆるいテンションと高いテンションの違い

 スイートスポットはラケットの性能にもよるので一概にどちらかが広いとは言い切れないところもありますが、ゆるいテンションの方では端の方へ当たるとかなり弾かなくなり、思わぬ方向へ飛んでいきます。しかしラケット面中央付近ではしっかりと弾くのでよく飛びます。こんなに飛ぶの?というくらい飛んで行きます。シャトルが当たるとラケット面がたわむため、当ててからシャトルが出ていくまで遅れますが、出ていくシャトルのスピードはある程度速いので、相手にとっては音ほど強く来る感じはないですがグイっと伸びてくる感じではあるようです。シャトルからくる衝撃はソフトな感じで、「ポーン」とテニスボールを打つような感じです。ちょこっと触ってクロスネットや上から沈めるなどの手首を使うようなショットはなかなか難しいです。
 高いテンションの方はラケット面のどこに当たってるかの感覚は薄くなります。中央から外れていたとしてもある程度まっすぐに飛んで行きますし、手にくる衝撃もさほど変わらないからです。

高いテンションラケットには「力」が必要

 高いテンションのラケットを使うにはある程度の力が必要だと言われています。この「力」というのはスイングスピードのことですが、これを上げるためにどうすればいいか、また今のスイングスピードならどれくらいの張力までコントロールすることができるのかという部分は非常に曖昧です。さらに張力が高いラケットによる腕への衝撃はどのくらいなのか、打ち方にもよりますがどこの筋肉へもっとも衝撃が強いのか、などは気になるところです。ラケットの重さ、バランス、ストリング(ガット)の太さ、筋力(どこの?)にも左右されると思いますが、さらにタイミングや体調、感覚やイメージ、自信によってもスイングスピードは大きく変わってくると考えられます。そうなると果たして今のテンションで大丈夫か?もしかするとその日の状態によっても変えなければならないこともあるのか?と考えてしまいます。それだけ高いテンションを扱うということは普段からの積み重ねが必要であるともいえるでしょう。トップ選手がそれを使えるということは毎日体調を管理し、筋力を維持し、感覚を磨き続けているからですね。
 では、一般ユーザーはどうなのでしょう。毎日ラケットを握る機会がある人は高いテンションのラケットのためにしっかりと体の状態を維持していけばいいと思います。しかしそうでないユーザーはちょっとした体調の変化による打点のズレやスイングスピードの変化でラケットからくる強い衝撃を受けなければならない確率が上がります。私もその一人で、もうかれこれ2年以上手首の痛みに悩まされています。私の場合は痛める前に肘を手術しているのでそれが原因かもしれませんが、そうでない方はもしかすると高テンションラケットからの衝撃が故障につながっているかもしれません。

ゆるいストリングステンションという発想

 ネットなどで色々情報を得て、13ポンドというゆるいテンションのラケットを試みています。最初はスマッシュが沈みすぎてネットにかかることも多かったですが、少し高めに押し出すように打つと正確に角度がついてはいるようになりました。また、クリアやロブはよく飛びますし、運ぶように打てば正確にコントロールできます。スマッシュを打ってもそれほど遅くなることはありませんでした。ドライブ系は手ではじくだけではうまくコントロールができません。押すように打てると素晴らしく押し込むドライブになりました。またスマッシュレシーブなどはしっかりとスピードを殺すことができるので、ネット前に沈めていくのは簡単になりました。焦って構えなければ返せないというイメージが少なくなるので、気持ち的に楽になっています。徐々に私のスイングスピードも下がって来ていると思われるので、もしかするとこちらの方がいいプレーにつながるのではないかと思っています。
 最近の練習でもプレーの幅が広がり、柔らかいネット前へのレシーブやネット前でラケットを立てて落とす球などが正確になり簡単には負けなくなってきました。面白いので練習を続けています。周りには「なに?ポンポンなってるよ?」と不思議な顔をされることもありますが(笑)。

ウッドラケットの効果

 私が中学校からバドミントンを始めたときは、経験者であろうとなかろうと全員がウッドラケットを使っていました。当時スチール製のラケット(ブラッキーなど)は販売されていましたが、「使わない」という伝統でした。「なぜウッドラケット?」と疑問に感じていましたが、「ラケット面中央に当てないとうまく飛ばないから」という説明でした。諸先輩方はそのウッドラケットで全国優勝していました。実績が出ているのでラケットのせいで負けたなんて言えません。そうやってラケットの中央に当てるという訓練をしっかりやったおかげか、初心者からでもすぐに基礎的な技術を身につけられたと思います。現在では始めから軽めのいいラケットを使うと思います。今からウッドラケットを使えとは言いませんが、ラケット中央に当てる技術を訓練するのはとても大切だと思います。高いテンションのラケットを最初から使うと、中央を外してもある程度まっすぐに飛びます。もちろんそこからより正確に打っていくように練習すればいいのですが、ある程度正確に打てるようになる頃にはもう中級者ですね。幼少期の感覚的なものはやはり早めに体験しておくことが大切かと思います。
 宅配ガット張りサービスの「Gappari」(https://gappari.com/)では入門者や初心者は16ポンドという緩めのテンションからを推奨しています。しかしもっと下げた13ポンドや11ポンドでもいいのではというレッスンプロの方もおられます「バドミントンでゆるガット@13ポンド!体験レポート」(http://badchu.net/yurugut/)。そこで紹介されている「ゆるガット創始者?」は全日本シニアでメダルを獲得されています。

生涯スポーツを通して

 初心者はスイングに無駄が多いのでなかなか力をシャトルに伝えられません。しかし「ゆるガット」のラケットであれば真ん中に当てることができればしっかりと飛ばすことができます。その上、シャトルを手首だけで弾くのではなく、しっかりと線のイメージで運ばなければ狙ったところに行きません。
 バドミントンラケットを初めて握る人はまず11〜13ポンドのガットテンションから始めて、ラケット中央に当てる技術を身につけ、中央を外した時の違和感を感じながら修正を繰り返し、ある程度正確にコントロールできるようになればラケットの適正ポンドにしていくのも一つの方法かと思います。そして元気バリバリの20代から30代は体を鍛えて30ポンド越えにも挑戦し、筋肉が体が少し硬くなる、練習頻度をあまりあげられない40〜50歳代に差し掛かってくると、またガットのテンションを下げてより省エネで正確なショットでプレーするのもいいかもしれません。もちろん「まだまだッ!」という人は30ポンド越えで頑張ってほしいものですが…怪我には十分ご注意を。

ーひとことー

 バドミントンのスイングスピードとガットの張力の関係がなかなかネットで探してみても見つかりません。バドミントンのスイングスピードを手軽に計測できるものがあれば自分の適正ポンドがわかりやすくなるのですが。もし情報があれば共有していただきたいと思っています。

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