バドミントンを考えるコラム#38 「パターンを変える」を考える①

 1.ストレートに打ってからクロスに打つ
 2.ネット前に落として上げさせる
 3.プッシュで押してストレートを待つ
 4.体正面を狙って相手ラケット側に来るサイドを待つ
 5.カットを打ってから強打する

バドミントンを始めてしばらくするとみられる典型的なパターンを挙げてみました。そこには以下のようになるだろうという予測が働いています。

 1.ストレートを取るとセンターに戻っていないのでクロスで追い込める
 2.ネットをぎりぎり打つのは難しいので上げてくれる
 3.強い球はクロスに返せない
 4.体の正面はラケットを横に振るのでラケット側のサイドに来る
 5.前に落とすと後ろに下がっていないので強打が取れない

 まずはこのパターンで攻めると相手を追い込みやすく、得点もとりやすくなると思います。相手を追い込むまでのショットに精度を上げるためには繰り返し練習する必要がありますが、試合などで試していく過程で効果が出てくると「気持ちいい」と感じてモチベーションが上がりさらに練習を重ねていけるようになるでしょう。精度を上げていくことはとても大切です。しかし、勝ち上がっていくと当然相手も同じ壁を乗り越えてきた経験があるでしょう。ストレートに打った後でクロスを待ったり、ネット前から上げるふりをしてクロスネットを打ってきたり、カットを打った後に強打と見せかけてさらにカットを打ってきたりとパターンの逆を突いてきます。

脳の3層構造

 人間の脳は3層構造になっていて、思考を司る人間の脳、感情を司る哺乳類の脳、そして行動を司る爬虫類の脳があります。パターンが決まり得点できてくると気持ちよくなり、感情を司る哺乳類の脳が活性化します。モチベーションにつながる非常に大切な働きです。しかし、一度味わった快感はなかなか忘れることができないため、同じパターンで決まるイメージ通りに打ってしまうことが多くなります。その辺りをうまく狙われて足元をすくわれる事もあります。パターンを読まれてやられた後は振り返って変えようと思うのですが、いざ同じような場面に出くわしてもなかなか変えることはできません。パターンを変えるには大きな不安感を伴うためです。

「変えて負けるくらいならやりたいことをやって負ける方がまだマシ」

こういう思考になったことはありませんか?もちろん否定はしません。それぞれの課題は違いますから。
 哺乳類の脳は身を守るために感情的で強い恐怖心を持っていて、未知の刺激を嫌います。これは本能的なものです。それを真面目な人は「これじゃダメだ!」「変えなければならない!」と人間脳の思考で責めます。しかし、ただ感情脳は不快感を感じるだけで拒絶します。強い不安感を持った状態では気持ちのいい新しいイメージは脳に定着しません。人が新しいパターンを身につけるためにはそれが「気持ちいい」まで発展しなければならないのです。

本能からの指示を無視する方法

 かつてうまくいっていたパターンが良い結果に繋がらなくなると不安感が襲ってきます。勝つためにはパターンを変えなければと思うのですが、脳は成功イメージを持つ元のパターンを実行したい。変える不安との葛藤に負け、結局パターンを変えることができずにあるレベルで成長が止まってしまう人を多く見てきました。もっと根深いところに変えない理由があるようです。なぜパターンを変えなければならないのかを真剣に考え、その支障になっている「変わりたくない本能」をいかに乗り越えるかが大切になってきます。変えられない人はただ哺乳類脳からの「変わるな!」信号に従っています。あなたの責任ではありません…。
 変えるために大切なことは感情脳が働かないうちに、行動脳を刺激するようにします。体から感情へと作用させていく方法です。それは「気づいたらすぐやる」という行動です。やって気持ちいいか悪いかを考えないうちに始めることが大切で、人は20秒迷うと感情脳が働きやらない選択をすると言われています。習慣化されるまで最低4日かかるそうなので、とにかく最初は継続せざるを得ない状況を作りましょう。例えば目が覚めたら目の前にラケットを置いておき、とりあえずギュギュッと握るなども面白いですね。そのような「とりあえずやってみる素直さ」が習慣化されていくと、周りがよく見えてきます。我欲で曇ったレンズが透き通ってくるためです。こうなってくると目が変わってきます。はっきりと開き、輝きだします。面白いものでこういう目をしていない人は、まだ曇りレンズを通して周りを見ているためぼんやりとしています。周りにたくさん転がっているいい見本から学ぶことができません。情報入手が簡単になっている今では、いいパターン、練られたパターンが身の回りにたくさんあります。しかし曇った眼では見えないのです。

「変える」と決意したなら、まずやってみる。そして他人の意見を聞く。それから考えて試す。上達する人はこの素直さと謙虚さを兼ね備えています。パターンを変えるというお話から深く掘り下げてますが、本当に変えなければならないのはそういった本能を超えるところからだと思います。

ーひとことー

 新入生の授業を担当していると、たまにですが「うまく成功するにはどうすればいいですか?」とか「どうやったら学力が上がりますか?」と単刀直入に聞かれることがあります。現状維持に満足せず向上しようとしているけれどもなかなか糸口が見つからずに悩んでいるようです。人は習慣の生き物です。その習慣を変えるにはしばらく周りの人と距離を置かなければならないこともあります。まずは「それに耐える気持ちはありますか?」と聞きます。そこから小さいことからやってみること、それを継続すること、モチベーションの維持方法のお話しします。コツコツと実践して変えられる人はやはり少ないですが、成功している人はそのあたりの微差を見つめているようです。私も何とかその微差を実践するよう心がけています。

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