バドミントンを考えるコラム#48 「イメージとのズレ」を考える

 “百獣の王”武井壮さんが現役選手時代にどうすれば勝てるのかを考えて気づかれたのは、勝てるフォームイメージどおりに体を動かすということでした。そこから「自分の体をイメージ通りに動かす」ことを日々実践されました。例えば腕を水平に上げ、水平でない場合に修正を繰り返したということです。簡単そうで気づかない細かい部分。なかなか独りで鏡の前でできることではありません。足を動かす場合も同じで、思ったよりも上がっていないこともあると思います。私自身も年齢を重ねれば重ねるほど自分のイメージと実際の違いに愕然となります。
 数年前、韓氏意拳という拳法の型を体験させてもらったことがありますが、模範を見ながら真似をしていても形が違っていたりして、「こうしますよ」と見せてもらっても、そのとおりにできておらず、「目の前で見せてもらっても真似できないのか!」と瞬間的に自分自身を否定してしまうこともありました。初心者ということもあり間違いを受け入れて稽古を続けられましたが、長年やっているバドミントンでは「こうなってますよ」とアドバイスを受けたとしても修正に非常に時間がかかってしまいます。失敗に対する恐怖感から、体が思うように動かなくなることさえあります。いつも生徒に「エラーしてもいいんだよ」なんて気軽に声掛けをしていますが、自分事となると「エラーするのが怖い!」と体が拒否してしまいます。成功体験なんて邪魔にしかならないことが多いです。
 以前に組ましていただいた方(元インハイチャンピオン)のサービスがすごく上手だったので、後ろからじっと観察していました。「サービスをうまく入れるコツは何ですか?」と質問すると、「ラケットを平行に押し出すように打ち出しますが、手首は固定して使いません。」と話されました。「めっちゃ練習しましたよ!」と話されました。勝つために血がにじむほど練習して体にしみこませたんだろうと思いました。
 バドミントンの指導の場面でもよくありますが、例えば左手を伸ばしてシャトルをつかむように指示しても、実際には左肘が曲がっていたり、シャトルと全く違う方向へ腕を伸ばしていたりしています。いざシャトルを打つとなると焦って元の間違った形になってしまうのでした。まだシャトルを打つのは早いなと、素振りで修正するのですが、その時は治ってもまたシャトルを打つ時になれば元に戻ります。理想の指導場面としては、ただ感覚に身を任せながら打ってみて、「今のはいい!」「今のは〇〇がダメ!」という瞬時の評価を繰り返されながら修正してくのがいいと思います。自分自身で評価することも大切ですが、左脳で「ああして、こうして」と考えると同時に、右脳で感覚に身をまかせるなんてできません。左脳で「〇〇する!」と決めたら後は右脳の活動をそっと見守る視点が必要になります。

イメージとは違った実際

 練習風景を動画に収めて見直してみると色々なところに気づくことができます。ダブルスではサービス場面で先手を取られると最後まで一方的に押し込まれることがあります。私自身の映像を見てみると特にフォア側サイド側のサービスに対して追い込まれることが多くよく狙われていました。なぜなのかをよく観察すると前足と後ろ足の位置関係が縦並びでサイドライン側に隙があるのがわかりました。以前に見た動画からこの部分は修正できていたと思っていたのですが、元の隙のある形に戻っていました。元に戻っているのを見たときにまだまだ型が身についていないなと思いました。

「なぜ狙われるのか」

それは形に隙があるからです。拳法の達人がただ立っているだけで相手は「隙がなく近づけない!」というようなシーンも見たことがありますが、特にバドミントンの動いてはいけないサービスの場面でも、立ち位置、構えなどある共通の型があると思います。まだまだ私自身がそこまで到達できていないので明確には言えませんが、多くの上級者の構え位置や型を見るだけでもいいイメージづくりとなると思います。 

感情が色眼鏡になる

 ゲームで大差をつけられていたり、同じショットで追い込まれ続けるとマイナス感情が出てきてしまいます。強い相手と対峙している状況を楽しめれば「挑戦」できるのですが、自己否定してしまうと思うように動かせない自分の体を恨めしく思ってしまいます。足が出ていない!ショットが沈まない!強く返せない!など、「ないない」尽くしになっているといい結果に繋がったことはありません。その後映像などを見て振り返ってみるともちろん動けていないところや隙のある形が目に入ってきますが、自分が試合中に感じていたよりも悪い状態ではないことに気づかされました。試合中は視界から見えた体の傾きやバランス、リズム感覚に過小評価をして「全くできていない!」と全てをひっくるめて自己否定しているのですが、実際のところはそれほどでもないのです。自己否定する感情が過小評価させているということに改めて気付かされ、新たな発見となりました。もちろん隙のある型は修正していく必要があります。相手も揺さぶりながら隙を狙ってくるので、そのきっかけになっているショットやその後の自分の型の隙をどれだけ修正できるかが鍵となってくると思っています。

ーひとことー

 おそらくどのレベルでも、自己否定から過小評価すると、いい型への感覚づくりが難しくなるのではないかと思います。ゲーム中に修正できることと、できないことをしっかりと区別して、できないことは考え過ぎずに覚えておく程度にしておき、試合を離れてから改めて自己分析してみると感情による過小評価イメージを増大しないと思います。上達のための自己分析を進めていく上でご参考になれば幸いです。

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