亡父は体育教師でした。そのおかげか私は幼い頃から運動が大好きで、学校や家の周りで毎日ドッジボールや手打ち野球、自転車で探検、鬼ごっこなどをして遊びまわってました。手打ち野球というのはピッチャーが投げるのではなく、左手で持ったボールをちょっと放り投げて、右手をグーにして打つ野球です(もちろん左利きは逆)。これ、今振り返るとはなかなか難しいことをしていたなと思うのですが、打つ人はグイーンと、ものすごく飛ばして外野越えのホームランを打つのです。飛ばせる人は短距離走が速い人と同様「ヒーロー」でした(笑)。私の50m走は小学校2年生時は8.3秒、4年生時は7.8秒とそんなに速くはなかったのですが、高校生では6.1秒となかなかの好成績を残すことができていました。
 足には自信があったので、プレースタイルはコート内を動きまくって、飛びまくって打ち込むというものでした。シングルスではとにかくネット前に落としてはロブを誘い、その球を1、2、3ッ、ジャンピングスマッシュ!!!でした。近畿地区合宿では比叡山高校の監督に「有田、ちょっと飛んで打ってみてくれ」と見本に使われ、少し誇りに思っていました。そんなことは今でも忘れないものですね。たまに褒められると嬉しいものです(笑)。スマッシュ・プッシュが私のシングルススタイルでしたので、ネット前からは如何に相手に低いロブを上げさせるかを考えていました。一番手っ取り早かったのが前からクロス奥へのロブ。追い込まれた相手は必死にストレート奥へ返してきます。高くあげられないのでそれに飛びついてクロススマッシュで決めていました。そんな癖が付いていたのか、相手のレベルが上がるにつれてクロスロブが読まれるようになってきました。逆にクロスロブをストレートスマッシュされて決められるというパターンが多く起こりました。それでもそのパターンをもっと速く動いてすればなんとかなる!とこだわってましたが、いかに太ももの太い私でも(笑)限界がありました。近畿高校選手権大会では準決勝で同県対決となり、パターンを知られていることもあり粘られました。1ゲーム目は先取したものの、2ゲーム目13-8(当時は15点サービスゲーム)のリード時に両足太もも前部が痙攣、屈伸をすると今度は後部のハムストリングスが痙攣。もはや立っているので精一杯。顧問の先生が白タオル(白旗のつもり?)を持ってきて「棄権する?」と言ってきましたが「最後までやります」と踏ん張りました。しかし2ゲーム目を落とし、ファイナルゲームも落とし3位に終わりました。ビッコを引きながら登った表彰舞台では拍手が起こりましたが、県予選では勝っていた相手だけに本当に悔しい気持ちしか残りませんでした。
 プレースタイルはさほど変わらず、初めて出場した全日本シニア30歳代ダブルスでは飛びまくりの打ちまくり、大声出しまくりでベスト8。その当時はあまり強豪が参加していなかったため今に比べるとベスト8までは山によっては結構スムーズでした。その時に観客席にいた3才上の大先輩方に「力入ってるな~」と言われました。確かにその通りでしたが、力を抜くと一気に負けそうなので力を抜くことは出来ませんでした。数年後、準決勝まで進み、その大先輩ペアと対戦する時がきました。1ゲーム目は打ちまくり、押しまくりで先取しました。かなり興奮していました。しかし、2ゲーム目になると高くあげてきた球を、打たされ、切り返しで追い込まれ、前へ詰められるというパターンにはまり、ファイナルはあっさりの敗退でした。完全に息が上がり、体も疲れ、隙だらけになっていました。

 足には自信があったので飛びまくり、打ちまくりの勢いに乗った全日本シニア準決勝は見事に切り返され敗退。平成17年のことでした。初メダルで嬉しさ半分、完敗で悔しさ半分でした。この試合でどれだけ体を鍛えても、それを上回る消耗があれば必ず隙ができると思い知らされました。体を鍛える方向を考えなければ。そんな時に目に入ってきたのが昔から見ていた「カンフー」でした。その動きを見ているとなんとも美しい。片足で立ちながら全くぶれない。軸がぶれず攻撃の後の防御も本当に素晴らしい。本場のカンフーを直に見たことはありませんが、その軸のブレなさがバドミントンに使えれば体勢の崩れによる疲れなどが少ないんじゃないだろうかと思いました。当時のバドミントンのトッププレーヤーのフォームを見ると本当に力が入っていないように見え、逆に日本人はやたらと頑張っていて力みが激しく結局遅い。こりゃ勝てないわな~と密かに思っていました。
 自分のバドミントンへの目線が変わるにつれて、柔らかくバランスをうまく保てることが大切だと色々と模索が始まりました。その頃は全国大会に生徒が出場していたので高校生のトップレベルを見る機会が多くありました。その頃は埼玉○高校の田○選手が圧倒的に強い中、ペアの松○選手にスポットを当ててみていました。逆手の使い方が素晴らしく、ほとんど体勢を崩しませんでした。「これだな」と確信し、逆手指導が始まりました。数年後、全国大会で上位の試合を観戦しているとイケメンで決勝に勝ち上がっている選手がいました。

「!!!めっちゃ脱力出来てるやん!」
(https://badminton.ac/column/1040.html)

現在再○館製薬所でコーチをされている渡○選手でした。できる!バドミントンでも酔拳のような舞が!!(笑)どうやれば脱力できるんだろうかという模索が始まりました。高岡英夫さんの「ゆる」に刺激され、丹田の存在を知り(ひたすら意識していますがまだわからないです)、そこから宮本武蔵やら山岡鉄舟やら桜井章一さんやら体の使い方の達人たちの書籍を読み漁り、そこから結局は意識を丹田に下げるための心持ちが大切だと知り、古武術やら仏教やら合気道やらインディアンやら禅やらそんな世界にも学びを求めていきました。楽しかったですね~。何はともあれバドミントンで「いかに楽に点を取り、いかに早く勝つか」が目的だったので、先人らの知識をどれだけ実践できるのだろうかと日々自分が実験台でした。この「いかに楽に…」の考えはインドネシアの北京オリンピックチャンピオンのルルクハディアント氏の言葉です。そうしているうちに今度はタウフィックヒダヤット氏が来ました!もちろん楽~に動いているのですが、この選手から特に学んだのは「足裏」でした。この使い方ができるからぶれずに速く移動できるんだなというのがはっきりとわかりました。

 頭ではわかっているものの、実際の試合では状況によってはうまくいったりまくいかなかったりがまだまだ起こりました。もちろん相手の状態がいいと、どうあがいても勝てないこともありましたが、「1ゲーム中で最低3回は必ずチャンスがある」という(誰が言ってたか忘れましたが)言葉はいつも頭においてコートに入ります。なので例え0-8で負けていようとも相手の様子を常に観察する平常心は鍛えられました。
 実際にバランスを保つために実践していたことはいわゆる一般的な重りを使った「ウェイトトレーニング」をやめるということでした。自重によるトレーニングに切り替えました。そしてランニングを継続させました。最初はゆっくりと、そして徐々にスピードをあげたくなると上げるというような方法をとりました。その時も体の傾き具合によってスピードをコントロールしました。傾けると早く、垂直に近づけるとゆっくりというようにです。いかに楽に走るか、そのためのバランスを維持するためにはどこに意識をおけばいのかを常に考えながら走っていました。おかげで市民マラソン大会壮年の部(40歳以上)で初代チャンピオンとなり、未だに記録が破られていないそうな(笑)。最近は走る時間を英語学習に当てているため実施できていませんが、柏原高校に勤務している時は毎日走っていましたね~生徒と一緒に。10年以上トレーニングとランニングは続けていました。
 そしてバランスを保つために、古武術を利用して(ってただの真似事に過ぎないと思いますが)意識を下げる手の形や肩甲骨を下げる方法を試していました。構える時の足の幅、ラケット位置、目線、視野、意識をする場所なども色々と試しました。しかし、実際の試合ではガタガタの時もあります。なんとかしようと試みてもなんともならないこともあります。ただ、以前に比べると圧倒的に試合の波は穏やかになり、また息の上がりが少なくなり、怪我も減りました(今回の腰痛は職員室ということもあり重いものを持って格好つけたかったのでしょうねーまだまだ未熟)。違和感が出るときはバランスディスクに乗ったりしながら股関節の動きを確認するようにしてみると改善が早くなった感じがします。

結論!

 バドミントンはバランスを崩す(軸を取る)スポーツです。バランスは崩されます。しかしそこからいかに楽に速く戻ることができるかでラリー展開は全く違ったものになります。また、バランスがいいと姿勢が良くなります。そうすると視野が広がるのでラリー中も相手を感じることができます。また息が上がりにくくなります。つまり無駄な筋出力が抑えられているということでしょう。怪我が少なく、最後まで動きを維持できるということは…シニア大会では大きなアドバンテージとなるのですね!ウェイトトレーニングで体を鍛え抜いていくのも一つの方法です。ただ、バランスを意識して取り組むのも一つの方法だと思います。私はどちらがいいかというと「楽」な方が好きです(^o^)
 
 さらに、座っていても背筋が垂直な状態の方が楽になり、その姿勢の方が居眠りしやすくなります。実際に電車などではこれで一瞬寝られます。一瞬でもふっと意識が飛ぶとそれだけで疲れが軽減したように感じます。また立っていることが楽になります。私は定期試験監督中にほぼ座ったことがありません。立っていて居眠り状態になっていることはありますが(笑)。たまに片足で立っている変な先生です。
 最近気づいたのですが、歩いていて人と出会い頭でぶつかりそうになっても一瞬で止まれるようになりました。職員室にそういうゾーンが多いので注意して歩いてはいますが、ピタッと止まれます。今までは歩く勢いの余韻が残っていて「かわす」ということが多かったです。つまり歩いている時も重心は丹田の真下に近づいてきているのかもしれません。バドミントンにおいても重心の意識が丹田の下にあればあるほど方向転換が容易ですので。毎日、今日のバランス維持能力はどんなものかをチェックしています。例えば靴下は立ったまま足を上げて履くとか。それがふらふらしてる時は違和感があるところを探します。大体は寝不足です(笑)。そういう時はより謙虚な1日を過ごします。

 このように常に意識してチェックしているとそれが自然になってきます。私もまだまだ日々鍛錬中ですが少しずつほぐれてきたかなという感じです。「バランス」を維持する能力を鍛えることは今のところ人生にとって「アリ」だと思います。今は一つのゲームのように楽しんでいます。
  
  皆さんも本気で取り組みませんか?

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