バランス

2005年度最後の全国高校選抜大会が終了しました。結果は全国高体連バドミントン専門部に詳細があります。
今回は全日本ジュニア、全日本総合で実力を発揮してきた埼玉栄高校の田児・松丸選手ペアを特に注目してみました。田児選手はすらっと背が高く、松丸選手は 背の低い選手です。しかし、両選手とも筋肉質でがっちりとした体格でないというのが外から見た印象です。

今までの高校生といえば、鍛えぬかれた強靭な筋力から発揮される鋭いスマッシュ、速いダッシュからの攻めが印象的なプレーが多かったのですが、ここ数年こ のスタイルが変わりつつあります。しかし、鋭いスマッシュや速いダッシュがなくなった訳ではなく、実際はもっと鋭く、速くなっていると感じます。
その理由はどこにあるのでしょうか?やはり鍛えぬかれた強靭な筋力でしょうか?

「バランス」

コートの中を速く動くためには、バランスを崩した状態では無理な力がかかり、それをリカバリーするために強い筋力が必要になります。バランスを保った状態 では最小限の筋力で速く動き出すことができます。バドミントンにおける「心肺能力は高い」ことが必須です。したがって余計な筋力発揮で筋肉の回復時間を長 くしては意味がありません。自分で自分の首を絞めているのと同じになります。

では、バランスを保った状態とはどんな状態でしょうか。「倒れない」状態だと考えることができますが、ここにも2通り考えることができます。一つ目はしっ かりとふんばり体を固めて立つ、2つ目は最小限の力で脱力しながら立つことです。一見力をいれてバランスを保つ方がしっかりと床を蹴れて速く動けると感じ るかもしれません。しかし、バドミントンはコート内をあらゆる方向に動き出さなければなりません。その方向に対応するためにはあらゆる関節角度をその都度 修正しないといけないのです。力を入れて構えていると関節から一度力を抜いて角度を修正してから動き出さねばなりません。しかし、最小限の力によって構え られているところからは容易に角度修正を行い動き出すことができます。

松丸選手(埼玉栄高校)の巧みなボディーバランス。床を足底全体で捉えることにより脱力を実現している。この状態だと羽をしっかりと見ることができるのでエラーは極端に少ない。
(写真掲載は本人の承諾を頂いています)

初期動作が速くなるということは打つための準備に余裕が出てきます。より早いタイミングでも打てますし、相手にショットを読まさない「タメ」を作ることもできます。

筋力に頼ったスピード、パワーは逆にロスになることがわかります。筋力トレーニングは必要ですが、それを活かすバランスを保つことの方が重要であると今大会を通してわかりました。

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