バドミントンを考えるコラム#43 「一流選手の言葉」を考える②

前回に続き、福万尚子さんの講習会から学んだことをまとめてみました。

 ダッシュの後はラダートレーニングでした。といってもラダーがなかったのでシャトルを地面に並べて、その間に色々なステップを入れていきました。合計で10種類くらいのステップを行いました。両足同時、片足けんけん、ジグザグなどを高速で正確にシャトルに触れないように行います。かなり難しいパターンもありました。しかし後の彼女の模範プレーを見てみると、この細かいステップによるタイミング取りと方向転換が非常にスムーズに行われていました。“彼女の動きの原点はこれかも”と思いました。
 最近の桃田選手のYoutube動画(桃CHANNEL "https://www.youtube.com/watch?v=NKxqcWDORrI")でもこのラダートレーニングが紹介されていました。「考えと行動を一致させる」と話されていて、自分のイメージしたどおりに体を動かせること、それに加えて相手のショットに正確にタイミングを合わせることは戦術上とても大切なことだと思いました。

「一本一本の精度を把握できているか」

 ステップ走は数セットずつ行われていましたが、なんとなく惰性でやるのではなく、今の動きはどうだったのかをちゃんと一つひとつ意識しなければいけないと話されていました。なぜうまくいかなかったのか、なぜうまくいったのか、もっと速くできないか、エラーをしないでできないかなどを常に考えて一本一本に目標を作ることを強調されていました。初めての経験は新鮮なので脳は感覚的にいろいろな情報を受け入れようとします。しかし繰り返してくると脳は運動を自動化していくので感覚を無視するようになります。そうなってくると一つ一つの動作を細かくチェックすることをせずに「なんとなく」で繰り返してしまいます。このトレーニングの指標は「いかにシャトル間に正確に速く足を入れることができているか」です。シャトルを倒せばエラーははっきりしますが、シャトル間の「どこ」に足を入れるかという意識まで持とうと話されていました。
 私事ですが、最近のゴルフラウンドで全く上手くいかずにたくさんボールを叩きました。大変悔しかったのでラウンド後に練習場でボールを打ちまくりました。しかしうまくいきません。その後、動画などから基礎を学び、練習を重ねていくとたまにいいショットが出るようになりました。しかしうまく繰り返すことができません。少しのズレで球はいろいろな方向へ飛んでしまいます。バドミントンや野球などボールを打つ競技は動いているボール(羽)だから当てるのが難しいと言われます。しかし止まっているボールを打つゴルフはもっと難しいと感じました。なぜなら非常に高い精度を求められるからです。はっきり言ってバドミントンはゴルフに比べるとかなりアバウトな精度だと言えるかもしれません。ゴルフ指導者は構えを見ただけで結果がどうなるかわかるようです。バドミントンにも共通する部分はありますが、ゴルフの方がかなりシビアです。バドミントンでは移動を伴うので不確定な要素が多く、この部分を直せばこうなる、と断定するのはかなり難しいのですが、結果と自分の感覚を頼りに細かく精度を見極めていく作業は非常に大切であると感じました。ゴルフから学ぶものは多いです。

「常に相手に見られていることを意識する」

 コート上では様々な情報があります。自分や相手の体格やスピード、自分や相手のショット、自分や相手の感情、自分や相手の状態などですが、勝つためにはそれらの情報をいかに活かして戦術に組み込むかが大切です。「自分」と「相手」とあえて書きましたが、体格やスピード、ショット情報は隠せませんが、感情や状態は隠す、もしくは偽ることができます。福万さんはトレーニングをして疲れている姿を見て「疲れている姿を相手に見せない!」と注意されていました。そういう情報は相手の気持ちも安定させますし、戦術に組み込まれてしまいます。膝に手をついて休憩するのではなく、歩いて回復させなさいと話されていました。上級者を見ればコート上ではさほど感情を出さずに淡々と戦っています。心の中ではいろいろな葛藤があるでしょう。しかし相手にとって有利な情報はあえて流さないように心がけることが大切で、それは普段からの行動にかかっていると指導されていました。試合では集中してやるのでそんな疲れた姿は見せない!と考える人もいますが、「試合でやらないことはやらない」と話されていました。
 困難な状況に出会ったとき、逆にいい結果が出たときにどう反応するか。相手にとって有利になる情報をどう扱うかを考えながら行動することが日常で試されているということですね。

「できた!」でおわること

 ステップも単純なものから複雑なものへと移行していくとうまくできない人も出てきます。しかし○セットという設定がある場合は、必ずゆっくりやってみてでも“できた!”でおわること、と話されていました。やはり成功体験は大切です。今の自分には「ゆっくり」が見合った目標であったわけです。そして徐々にスピードを上げていくことを繰り返していくと知らず知らずのうちにより高いレベルへ行けるということですね。そしてできないことができたときに「しっかり考えること」と話されていました。

「教え合い、学ぶこと」

 大切なことはフィードバック。自分自身でできることもありますが、周りのチームメイトにフィードバックされる方が自分では気づけないところの発見にもつながります。「教え合い、学び合うこともチームとして取り入れられれば理想ですね」と話されていました。個人スポーツに位置づけられるバドミントン。しかし協力して全体が上がるともっと高みに行けると体験談を話されました。この辺りも今のチームにどう取り入れていくかを指導者の立場として考えさせられました。

次回に続きます。

福万尚子さんのプロフィールはこちらからご覧ください

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